京阪神の百貨店で、訪日外国人観光客(インバウンド)の取り込みに地域差が生じている。大阪ではインバウンドの売上高が約2割を占める店舗がある一方、国際港湾を擁する神戸は京都にも後れを取っており厳しい状況だ。神戸の百貨店は、伸び悩む国内景気を支える「爆買(ばくが)い」の取り込みに有効な手だてを見いだせないでいる。(長尾亮太)
老舗や高級ブランド店などが軒を連ねる大阪・心斎橋。大通りに観光バスが到着すると、多くの外国人団体客が降り立った。向かう先は、大丸心斎橋店だ。
同店は本館と南館、北館の3館があるが、昨年末から建て替えのため本館を閉鎖している。これに伴い、南館と北館の売り場を再編。南館は地下を除く全フロアをインバウンド専用に衣替えした。家電、化粧品、時計、薬、日本茶などが並び、店員と外国人客が話す中国語が館内を飛び交う。
同店では、売上高に占めるインバウンドの比率が年々拡大している。2013年度の3・1%から14年度は7・8%へと急増し、15年度は15年11月時点で19・6%に達した。運営する大丸松坂屋百貨店の担当者は「やり方次第では、インバウンドの需要をもっと取り込める」と手応えを感じている。
大阪では、高島屋大阪店でインバウンドの比率が約10%(15年3~8月)となり、阪急うめだ本店が「一ケタ台後半」、大丸梅田店も6・4%と、波及効果が広がっている。
京都でも大丸京都店が7・5%、高島屋京都店が約5%を占める。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの推計によると、近畿2府4県のインバウンド消費額は約4138億円(14年)。このうち大阪府が約2420億円と6割近くを占め、兵庫県は約359億円で1割に満たない。世界的な観光地である京都府は約1134億円で3割近くに上る。
大阪の最大の利点は訪日客の入出国拠点である関西空港から近いこと。三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、関西の中で大阪に爆買いが集中する理由について「関空に近く、帰国直前に大量に買い込めるため」と分析する。
一方、神戸の百貨店では取り込みの遅れが顕著だ。訪日客の主要ルートである東京-大阪間から外れており、「地域一番店」の大丸神戸店でも15年度のインバウンドの比率は1・9%と、大丸心斎橋店に遠く及ばない。
大丸神戸店は昨秋、インバウンドを狙って中国人に人気の総合免税店「ラオックス」を誘致した。現時点で「売り上げは思ったほど伸びていない」(ラオックス担当者)というが、大丸は「初めて訪日した観光客が東京、大阪、京都を巡った後、次の来日で訪れるのは神戸」とみる。
神戸の百貨店がインバウンドを取り込む方策について、同コンサルティングの鈴木明彦調査部長は「店の近くに大型バスを止められるよう行政と連携し、洋菓子など神戸らしい商品で差別化するべき」と提案している。
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