自力でのグループステージ突破がなくなり、ギリギリのところまで追いつめられている日本代表。24日の2014年ブラジルワールドカップ・グループC最終節コロンビア戦(クイアバ)がザックジャパン4年間のラストマッチになる可能性は大いにある。
「明日が非常に重要な試合だっていうのは十分理解してますし、この4年間で明日が最後の試合にならないように。自力はないですけど、自分たちがしっかりと結果を出して、あとは裏カードがうまくはまってくれることを信じてやりたいなとは思っているので」とベテラン・遠藤保仁(G大阪)も切実な様子で語っていたが、希望がまったく見えないまま彼らが敗れ去ってしまったら、日本サッカー界の未来に暗い影を落とすことになるのは間違いないだろう。
そんな日本がミラクルを起こすには、まずコロンビアに2点差以上つけて勝ち、コートジボワールがギリシャに引き分け以下で終わるという条件をクリアしなければならない。ここまで2戦2勝と快進撃を見せているコロンビアを倒すのは非常にハードルが高い。加えて、試合会場のクイアバは日中の気温が35度近くまで上昇する。キックオフの16時はまだギラギラとした太陽が照りつけており、涼しかったベースキャンプ地・イトゥと同じ国とはまったく思えないほど。前日移動してきた選手たちは十分な適応時間を得られないまま、最終決戦に突入することになる。
この気象条件や2試合の疲れを考えると、日本は19日のギリシャ(ナタル)とまったく同じメンバーで戦うことはできないだろう。2試合フル出場したものの、シュートゼロに終わっている岡崎慎司(マインツ)や無得点のままの大迫勇也(ケルン)らは控えに回る可能性も考えられる。さらに、ボランチのキャプテン・長谷部誠(フランクフルト)もコンディションが今一つで、今回もピッチに立たせるのはリスクが高い。
ザック監督は22日のトレーニングで、ボランチに青山敏弘(広島)と山口蛍(C大阪)を並べ、2列目に右から大久保嘉人(川崎F)、本田圭佑(ミラン)、香川真司(マンU)を入れ、1トップに柿谷曜一朗(C大阪)を配置するという攻撃陣を試したようだ。タテへの意識が強く、スピーディーな展開のできる青山の投入というのは、ここ2試合の課題だったプレースピードを上げるのに有効だろう。1トップは柿谷なのか、大久保なのか未知数なところはあるが、青山は彼らが一発で背後を突くボールを出せる。それは昨夏の東アジアカップ(韓国)や6月6日のザンビア戦(タンパ)でも実証済みだ。
本人も「まだ試合に出ると出ないとでは違うと思うし、出てみて初めて感じる部分はあるし。出て何かをつかみたい、感じたいというのは、外から見て、ベンチから見て、余計に思うので。(明日は)出ます」と決戦への並々ならぬ意欲をのぞかせた。彼が世界レベルでどこまでやれるか未知数な部分もあるが、状況をガラリと流れを変えてくれることもあり得るだけに面白い。ここは彼に賭けてみたい気がする。
その青山だけでなく、山口にしても、最終ラインのメンバーにしても、前線に思い切ったタテのボールを数多く入れていかないと、本田や香川、大久保らに決定機は訪れない。その回数を増やすことが、2点差勝利を引き寄せるポイントといえる。
「後ろからのビルドアップでもうちょっと後ろからスピード、テンポを上げることで前で余裕が出てくると思うし、その球をいかに勇気をもって前につけられるかが大事になってくる。そこは前とディフェンス陣でも話しましたし、意識してやっていきたい」と最終ラインを統率する吉田麻也(サウサンプトン)も後方からのスピーディーなビルドアップの重要性を強調していた。それがあって、初めて前線の分厚い攻めが成り立つのだ。
香川もいまだ今大会シュートゼロにとどまっているだけに、今回こそは絶対に結果を出してもらうしかない。「僕は自分たちを信じてやるだけ。やるのは自分たちですから、必ず勝てるように頑張ります」と香川自身も悲壮な決意を口にした。
ザックジャパンはこの4年間、本田と香川の2枚看板で攻撃を組み立ててきた。2人が揃わないことも多かったが、彼らが同じピッチに立ったときにはマークも分散され、本田がより迫力を持ってゴール前へ侵入できたり、右サイドの岡崎がグイグイと裏へ走りこんだりできていた。そういう推進力を取り戻すためにも、彼らが良い距離感でプレーすることが肝要だ。そういう小気味いい攻めを見せることができれば、必ずゴールは奪える。追いつめられた今こそ、日本の真骨頂を遺憾なく発揮してほしいものだ。
文/元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。