子どもたちと外国人講師が年間を通して英語で交流する大阪市の事業が6月から本格化する。即興で討論したり、「英語村」を設けたりと24区中4区がそれぞれ民間委託して独自色豊かな内容を展開する予定。グローバル化に伴う人材育成として「市の特色事業」(市政策企画担当)に位置付けており、どれだけの子どもたちを“世界”にいざなえるかが問われそうだ。
■発言引き出す
「Are you ready?(準備はいいかい)」の呼び掛けに小学生らが一斉に「Yes!(いいよ)」と応じて始まったのは阿倍野区の「アベノキッズ英語ステーション」体験会。5月29日、小3~6年を対象に区役所で開かれた。50人の参加枠に約100人が集まり、関心の高さを物語っていた。
外国人講師らは、身ぶり手ぶりを交えて生活の場面を再現したり、読み聞かせをしながら児童の発言を引き出すよう工夫。積極的にやりとりした小坂文乃さん(8)=同区=は「(外国人と)話せるのが楽しかった」と目を輝かせていた。
事業受託するNPO法人留学協会関西事務局の嘉悦弘一郎事務局長(38)は「音をよく聞きながら外国人のノリを感じ、発話につなげてもらえれば」と指導プログラムの狙いを話す。
6月から来年3月まで約200人の児童が10人規模のクラスで週1回レッスンを受けられるように教室を運営。海外の勤務経験がある羽東良紘区長は「言葉だけでなく英語圏の文化も学びながら自分の世界を広げるきっかけにしてほしい」と思い入れを示し、4区中最も早く教室の開講に踏み切る。
■習得より関心
市教育委員会の英語教育とは別枠で取り組む市の英語交流事業は、相応の努力が必要な「英語の習得」よりも「英語に関心を持つきっかけづくり」の側面が強い。受講対象や事業内容はそれぞれ個性的で「今後、人材育成を展開するための原動力にしたい」(市担当者)考えだ。
若い世代の転入者が多いという中央区では「小さいころから英語に親しめる環境をつくりたい」(区担当者)と就学前~小2を対象に週1回教室を開く予定。港区は、対象の小中学生のうち小学生には英語圏の生活場面を再現する「英語村」を開く一方、中学生には英語を使う職業人との交流を促し将来を考える機会としても生かす構えだ。
天王寺区では、即興でディベートをする事業を中学生向けに8月から実施する方針。討論の手法に詳しい大阪府立大学の中川智皓助教は「英語での発信力が身に付きやすく、グローバル化の下、ますます重要になってくる教育手法では」と指摘する。
今回得られる成果と課題を丁寧に検証し、市教委とも連携しつつ次年度以降にどう生かしていくかが注目される。
- 大阪日日新聞より