円安やビザ緩和、格安航空会社(LCC)の台頭などを背景に増加している外国人客を取り込もうと関西空港に乗り入れる鉄道、バス各社が受け入れ態勢を強化している。関空駅に外国人案内スタッフを配置するほか、外国語ウェブサイトを開設してお得な割引切符を販売するなど、個人観光客に狙いを定めて“水際”で囲い込む戦略だ。
■安心感が大事
大阪入国管理局関西空港支局のまとめによると、昨年1年間に関空から入国した外国人は前年比29%増の231万7千人。ことし1~3月の実績も前年同期比33・5%増の66万6900人と好調に推移している。同支局は「関空がアジア路線に特化していることもあり、外国人入国者の85%はアジアから」としている。
この状況を受けてJR西日本は昨年9月、中国人スタッフを関空駅のみどりの窓口に配置。目的地までの切符の買い方や外国人向けのお得な周遊切符「エリアパス」などを案内している。
スタッフの一人で、留学生でもある※暁菲(けいしゅうひ)さん(23)は中国語と英語に対応。到着直後に窓口を訪れた外国人客の行き先や旅の目的などを把握し、アドバイスする。
※さんは「切符の買い方だけではなく、目的地の最寄り駅や観光地について聞かれることもある」と話す。外国人客に最も好評なのは交通ICカード「ICOCA(イコカ)」と関空直通の「特急はるか」(片道)のセット商品「ICOCA&はるか」(3千円)だという。
体制拡充のため同社は4月から主要3駅(天王寺、新大阪、京都)にも外国人スタッフを配置。担当者は今後も外国人客は増加すると見込んでおり、「訪日した最初の段階で安心感を持ってもらうことが大事。将来のリピーター確保につなげたい」と狙いを明かす。
■LCCと提携
同じく関空に直通列車を乗り入れる南海電鉄は、外国人客が出発前にインターネットで乗車券や旅行商品を購入できるシステムを2月末に導入。英語、韓国語、中国語に対応する専用サイト「ハウ・トゥー・エンジョイ・オオサカ」を通じて購入を申し込み、クレジットカードで決済すると引換証がメールで発行される。これを関空駅にある同社のサポートセンターで提示すれば実物の券と引き換えできる。
関空と難波を結ぶ「特急ラピート」の片道と大阪市営地下鉄、市バスが乗り放題となる「ようこそ大阪チケット」を3割ほど安い1500円で販売するほか、高野山を巡る周遊券などを扱う。
またアジア・太平洋地域に多くの路線を持つLCCのピーチ・アビエーションやジェットスターと提携。機内でラピート乗車券の販売などを行っている。
リムジンバスを運行する関西空港交通は、柔軟な路線開設で鉄道との住み分けを図る。
3月には、あべのハルカスの観光需要や近鉄線へのアクセス向上のため「関西空港-あべの便」を新設。また4月のダイヤ改正では早朝発の国際便に間に合うよう、JR京都駅からの始発便の出発時刻を40分早めて午前4時半に変更した。
※は「刑」の右が「おおざと」